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技術情報・技術コラム

タングステンとは?特徴と主な用途について解説

タングステンは、高い融点と硬度が特徴的な金属です。比重が大きく剛性に富んだ特性を生かし、さまざまな分野で利用されています。タングステンはダイヤモンドに次いで高い硬度を持っているので、削りにくく加工しにくいのが難点ですが、同時に長所でもあり、摩耗しにくい工作機械として高い需要を誇っています。

本記事ではタングステンの特性や有効な活用方法、利用される分野などについて解説します。

タングステンとは?

タングステンとは?

タングステンとは、金属の中で融点が高く耐摩耗性のある金属です。熱に強い特性を生かし、主に高温になる環境で使用されたり、高級な切削用工具に使われたりしています。

また比重が大きく剛性に富んでいるため、砲弾に使用されることもあります。比重は金とほぼ同じで、鉄の2.5倍、鉛の1.7倍もの重さです。

さらにタングステンは、あらゆる金属の中で加工しにくい、難削材に位置づけられています。ひとことで言えば、硬すぎて削りにくい金属ということです。それもそのはず、タングステンは、モース硬度でいうところのダイヤモンドの「10」に次ぐ「9」にランクされています。

10にランクされるのはダイヤモンドのみなので、タングステンはダイヤモンドに次ぐ硬い物質ということになります。その特性を生かして、金型の摩耗しやすい部分にタングステンを使うことにより、金型の寿命を延長させる加工を可能にしています。具体的には、低圧力鋳造型、中子造型のシリンダーヘッド、シリンダーブロックなどに使用されることが多いです。

なおタングステンは耐熱・耐摩耗性に優れる一方で、衝撃に弱い金属でもあります。そのため、金型を外す際などにハンマーなどでたたいたりすると、割れてしまう可能性があるので注意が必要です。タングステンを使用する場合は、長所と短所をよく理解しておかなければなりません。

タングステンは非磁性の金属

タングステンは、金属の中では珍しく非磁性金属ですが、これはタングステンの電子配列や結晶構造によるものです。

タングステンが非磁性であることも、タングステンが多方面で活用される、重要な要素の一つとなります。非磁性なので磁場に影響を与えず、磁場の影響を受けることなく使用可能です。多くの金属が磁性を持つ中で、非磁性金属であるタングステンは、磁気の影響を排除したり電磁干渉を回避したりするために使用される場合もあります。

タングステンはレアメタルの一種

タングステンは、経済産業省が定めたレアメタル31鉱種の一つです(※)。レアメタルとは産出量が少ない金属で、希少金属とも呼ばれています。タングステンの埋蔵量は250~300万トン程度といわれており、鉄の埋蔵量2320億トンと比べると、いかに少ないかが分かります。

タングステン鉱石(灰重石、鉄マンガン重石)の産出は、中国が圧倒的な量を占めており、日本ではほとんど産出されないため、中国からの輸入に頼らざるを得ない状況です。

※参考:経済産業省.「レアメタル・レアアース(リサイクル優先5鉱種)の現状」

https://www.meti.go.jp/shingikai/sankoshin/sangyo_gijutsu/haikibutsu_recycle/pdf/026_04_00.pdf,p2,(2024-02-15).

世界のタングステン採掘状況

2021年のタングステン産出量は、第一位は中国、第二位がベトナム、第三位がロシア、第四位がルワンダ、第五位がスペインでした。中国はタングステン鉱石の埋蔵量が極端に多く、世界の全産出量の約8割を占めています。つまり、世界のタングステン供給は、中国がほぼ独占している状況です。

中国はタングステン鉱石産出において、世界で圧倒的優位にいる立場を利用し、2021年には減産に踏み切りました。そのため、世界のタングステン市場は混乱に陥りました。中国が減産すると世界の供給量が減ってしまうので、中国以外の産出国は増産しましたが、それでも世界供給量の2割程度にしかなりませんでした。

タングステン鉱石産出で、中国が世界の中で圧倒的優位にいる以上、中国以外の国は中国の出方を見守るしかありません。タングステンには多くのメリットがあり、各分野に活用したいところですが、それが可能かどうかは中国頼みになりそうです。

日本のタングステン採掘状況

日本国内では、岩手県世田米鉱山、清水沢鉱山、堂場鉱山、太子鉱山、女牛鉱山、京都府の鐘打鉱山、山口県の喜和田鉱山、玖珂鉱山、岡山県吉備鉱山などで、タングステン鉱石を産出していましたが、安価な中国産鉱石に押され、現在国内の採掘はほぼ停止しています。

タングステンの利用時はタングステン合金に加工されるのが一般的

タングステンとは?

タングステン合金は、タングステンと他の金属や非金属との組み合わせで作られます。通常の条件下では、タングステンは非磁性ですが、合金にすると磁性を持つことがあります。つまり、非磁性金属から磁性金属に変化する場合があるということです。

これは、他の金属にはあまり見られない特徴といえます。

タングステン(タングステン合金)の主な用途

ここで、タングステン(タングステン合金)の主な用途をご紹介します。

切削工具への利用

金属の切削や加工するための工具は、高い硬度と耐摩耗性を求められます。エンドミル、ドリルビット、ボーリングバー、タップといった切削工具には、タングステン合金が多く利用されています。また、耐摩耗性を生かして、金型、ベアリング、歯車などの摩耗しやすい部品にも多く使われています。

精密機器への応用

タングステンは電気伝導性が高いため、電子機器にも多く利用されています。特に電極やフィラメントなどには耐熱性が要求されるので、タングステンが適しています。

またタングステンは、放射線装置や真空管、ハロゲンランプなどにも応用されています。さらにはジェットエンジンのタービンブレード、熱シールドなどにも、タングステン合金の耐熱性が生かされています。

その他、タングステンは医療機器の分野でも欠かせない存在です。エックス線撮影装置のアノードやカテーテルの先端など、血管内治療や放射線で利用する部品には、タングステンが多数使われています。

耐衝撃性と剛性の応用

衝撃に強い特性を持ったタングステン合金は、航空機や自動車エンジンの部品製造にも使われています。またその密度を生かし、重量のある部品やバランスウェイトにも多く利用されることがあります。

加えて、タングステンは密度が高く硬度があるため、防弾チョッキや防弾車両などに利用される場合もあります。またタングステンの剛性を生かし、ダーツのバレルやゴルフクラブのウェイトといったスポーツ用具に使用されるケースもあります。

タングステンと鉛の違い

タングステンと似たような性質を持つ金属に鉛があります。鉛は容易に採掘でき、加工もしやすいので、人類が昔から使用してきた金属です。例えば古代ローマでは線や文字を書くために鉛が用いられており、これが鉛筆の起源となっています。

日本に鉛が輸入されたのは戦国時代のことで、当初は屋根瓦や弾丸、貨幣などに利用されていました。その後はガラス、はんだや鉛蓄電池、放射線防護材、電極材料、防音材、塗料などに利用されてきましたが、鉛中毒の問題があるため、使用が激減していきました。

そこで、鉛の代替金属として注目されるようになったのが、タングステンです。タングステンには毒性がなく、そのまま鉛に取って替わることのできる金属といえます。

ただし、タングステンを製造するには、原材料を高熱処理しなければならず、製造コストが高くなるというデメリットがありました。またタングステンは硬いため、鉛のように簡単に曲げられない点も問題でした。そのためなかなか利用が拡大されない期間もありましたが、近年になってからは製造加工技術が進歩し、現在では鉛に替わる金属として活用されつつあります。

タングステンとモリブデンの違い

モリブデンは、タングステンと共通点の多い金属です。まず、どちらもレアメタルに属しています。融点が高いことや耐熱性に優れていること、比重が大きい点や熱伝導率が良い点も似ています。

ただ一つ違うのは、モリブデンは非常に加工しやすいという点です。モリブデンは鉄鋼用添加剤、自動車用薄板や航空機用特殊複合材、石油精製時の脱硫触媒、化学工業用触媒・添加剤として幅広く使用されています。

通常、金属は加工しにくいものですが、モリブデンは加工しやすいので、使いやすい金属といえるでしょう。ただし熱耐性を見るとモリブデンの方が融点は低いため、高温になる環境での使用には適しません。

これらのことからタングステンは、モリブデンと比較すると、より厳しい環境での使用に耐え得る金属といえるでしょう。

タングステン(タングステン合金)の新たな使い道

先述のとおりタングステンは加工しにくいため、従来はあまり使われていませんでした。しかし、加工技術が進歩したことにより、多くの分野で使われるようになっています。最後に、タングステン(タングステン合金)の新たな使い道をご紹介します。

タングステンシート

1つ目の新たな使い道は、タングステンシートです。一般的に、タングステン粉末をゴム状樹脂に混入したものを、タングステンシートと呼びます。

タングステンシートは伸縮自在なので、さまざまな用途に使えるのが利点です。放射線を遮断する機能が優れているため、すでに放射性物質を扱う作業や、エックス線検査時の遮蔽材として活用されています。またオーディオの分野では、ターンテーブルの振動吸収や、防音対策にも利用されています。

放射線防護服

2つ目の新たな使い道は、放射線防護服です。放射性物質がある場所や、放射能やエックス線を浴びる可能性がある場所で着用する防護服です。

以前は放射線防護服には、鉛が使用されていましたが、鉛中毒のおそれがあるので、現在ではタングステンを使用するケースが増えています。

エックス線対策用遮断カーテン

3つ目の新たな使い道は、空港の手荷物検査で活躍する、エックス線対策用遮断カーテンです。空港の手荷物検査では、検査物をベルトコンベヤーに乗せて運ぶ途中で、エックス線による荷物検査が行われます。その際に係員が被ばくしないよう、ベルトコンベヤーの出入り口に設置してあるのがエックス線対策用遮断カーテンです。

タングステンは幅広い用途に利用可能

タングステンは、熱に強く硬くて密度が高いという金属です。他の金属には見られない特性を持っているので、さまざまな分野で活用できる可能性があります。今後タングステンの用途は、ますます広がっていくでしょう。

エバーロイ商事株式会社は、耐摩耗用の超硬工具およびスプレーノズルの製造販売を行っています。ご検討の際は、お気軽にご相談ください。

この記事を監修した人

エバーロイ商事株式会社

大久保 文正

エバーロイ商事株式会社

昭和33年の設立以来、長年にわたり超硬工具の販売。
その製品はエバーロイの名で、広く多くのお客様からご支持をいただいております。
技術革新の激しい時代の中、お客様のあらゆるニーズに対応すべく、製販一体となって当社のオリジナリティを生かした営業活動を推進して参ります。

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